遺留分制度:相続の時に亡くなった人(被相続人)が相続人のために一定割合の財産を保障する制度。
被相続人は自分の財産を自由に処分できます。しかし、例えば遺言で「第三者Aに全財産を相続させる。」とした場合、残された相続人である配偶者や子供の生活が不安定になりますし、財産の分け方として不公平となってしまいます。被相続人が財産を自由に処分できることと残された相続人の生活の安定および公平な財産の分配を調整するための制度です。
被相続人が遺留分を侵害する財産の処分をしても無効とはなりません。相続が発生してから遺留分権利者が遺留分減殺請求という請求ができます。
被相続人がした贈与が遺留分減殺の対象としての要件を満たす場合には、遺留分権利者の減殺請求により、贈与は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者が取得した権利はその限度で当然に右遺留分権利者に帰属する。(最判平成11年6月24日)
だれが遺留分をもっているのか?
・配偶者 (法定相続分 ✕ 2分の1)
・子 (法定相続分 ✕ 2分の1)
・直系尊属 (父母)(法定相続分 ✕ 3分の1)
※兄弟には遺留分はありません。
遺留分の基礎となる財産 = 相続開始時の財産額 + 贈与した財産の価額 - 債務全額
遺留分侵害額 =(遺留分の基礎となる財産 × 総体的遺留分の割合 × 遺留分権利者の法定相続分の割合)- 遺留分権利者の特別受益額 ‐ 遺留分権利者が相続により取得した財産額 + 遺留分権利者が負担すべき相続債務額
相続開始時の財産(積極財産)とは、
・現金
・預貯金
・土地建物
・有価証券などのプラスの財産
贈与した財産とは、
・相続開始前の1年間になされた贈与
・1年以上前に遺留分を侵害することを知ってした贈与
・特別受益
・遺留分を侵害すると分かってした不相当な価格でした売買など
遺留分減殺の順序
・遺贈 → 贈与
・遺贈が複数ある場合は価額の割合に応じて減殺
・贈与が複数ある場合は相続開始時に近いものから減殺
遺留分の時効
・遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続開始および減殺すべき贈与や遺贈があることを知った時から1年間行使しないときは時効により消滅する。
・減殺すべき贈与や遺贈の存在を知らなくても相続開始から10年で時効により消滅する。
遺留分の放棄
・相続開始前にする遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限りできる。
(遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
(遺留分の算定)
第千二十九条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
(贈与と遺贈の減殺の順序)
第千三十三条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
(遺贈の減殺の割合)
第千三十四条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(贈与の減殺の順序)
第千三十五条 贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。
(不相当な対価による有償行為)
第千三十九条 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
(減殺請求権の期間の制限)
第千四十二条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
(遺留分の放棄)
第千四十三条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp)
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